手に職が欲しい!この事件から始まった|プロローグ①

家族が突然「起業する」と言い出したら?
この記事では、そんな出来事を通じて、準備不足な起業のリスクや家族の巻き込まれ方、そして “自分に手に職を持ちたい” と思うきっかけとなった体験を綴っています。

40代から始まった夫の反乱

晩婚のふく子は3人の子持ち

ふく子は晩婚ではあったが、40代に突入した頃には3人の子を持つ母となっていた。

その当時3人目はまだ乳飲み子で、育児に追われる日々を送っていた。

夫は会社員で、プライドの高い仕事人間であり、なんにせよ常にトップを目指す男だった。

自己肯定感が低いゆえなのか、トップでないと意味がないと言い切る。

自己中心的な一面もあったが、働き者で義理堅く、部下からの信頼は厚かった。

しかし、組織にとっては少し厄介なタイプでもあった。

パフォーマンス型で、結果を出すことでの周囲マウントタイプでもあった。

突然の「俺、起業する」宣言

そんな夫がある日突然「俺、起業する」と言い出した。

しかも、その業種が フランチャイズの障子貼り。

「マジか……」と呆れるふく子。

社内結婚だったため、夫の仕事内容や抱えるストレスは理解していた。

彼が起業を考えたのも何か理由があるのだろうと思いつつ、ふく子は 「障子貼ったことないやん」 と心では冷静に突っ込んでいた。

行動力があるが思慮が足りない

夫は、じっくり考えるタイプではなく、勢いと行動力で突っ走るタイプ。

まずはやってる、やってみて後から考えるというのはふく子と似ているかもしれない。

その当時の夫はまるで新しいおもちゃを見つけた子どものように、楽しそうに準備を進めていた。

だが、ふく子は気づいていた。

夫が起業したい理由は「障子貼りに魅力を感じたから」ではなく「会社で自分のやりたいように仕事ができなくなったから」 なのだと。

姑からの電話「息子を止めてくれ」

そんな時、姑から電話がかかってきた。

「ふく子さん、息子を止めてくれ」と。

自営業をしていた姑も気づいているのだ。

息子は自営ができる力量がある子ではないということに。

しかし、ふく子は断った。

「多分、もうあの会社ではやっていけないのかもしれない」という予感と、夫なら 仕事を無理繰り取ってくる能力はあるという期待があったからだ。

その時は「夫が鬱になってしまうよりかマシ」だと考えていた。

仮にやっていけなくなっても、自宅を手放し、都落ちしてもいいとも考えていた。

ふく子は家族が笑っていたらそれでいいとも思っていた。

夫の独立起業への準備がどんどん進む

自宅駐車場を仕事場に改築できるか不動産に相談し、その物件を見に行くなど、夫は積極的に動いた。

金融公庫で320万円を借りる手続きをするなど、着々と準備を進めていた。

ふく子は理解を示しながら相当悩んではいたものの、最終的には 「やるしかない」 という覚悟を決めた。

子どもを育てていかなければならない。

大黒柱の夫をコケさせるわけにもいかない。

とはいえ、覚悟を決めるには4か月間ぐらいモヤモヤした気持ちでいたと思う。

ふく子はやると決めたら夫をサポートできるように事務処理や税金のことや起業に関する本を読んだりした。

勝手に契約書に印をつく夫

ふく子は夫にお願いしていたことがある。

夫のやろうとしている仕事はフランチャイズで、契約後に研修があった。

そのフランチャイズの権利を獲得するためにその会社に120万円の支払いが必要だった。

これは金融公庫の借り入れから払う予定の金額であった。

ふく子はとにかく、その会社と交わす契約書の内容を知りたかったので「必ず私に契約書を読ませてから印をついてくれ」と夫にお願いしていた。

実印はふく子が預かっていた。

これには理由がある。

漢気があるというのは厄介で、誰かの保証人になる傾向があると分かっていたからである。

ようは、プライドが高く、無自覚に自己肯定感が低いため、人から持ち上げられると弱い夫はある意味「騙されやすい人」だという認識をふく子は持っていたからである。

そんな夫は金融公庫の借り入れ手続きで実印が必要と告げ、ふく子から印を受けとり、その足でフランチャイズの契約書に印をついてきてしまうのである。

これにより120万円の支払いが確定した。

ふく子は契約書を読めていない。

この件はふく子をひどく怒らせたことは言うまでもない。

「起業をする気持ちが揺らぐとしたらどんな時?」

もう今の会社を離れ、起業することに自分の気持ちは揺るがないのか?を確認するべく夫に質問をした。

夫の答えは 「今の会社で以前のポジションに戻れるなら」 だった。

夫はあることで降格処分になり、別の支店で補佐的な仕事を任されて3年経っていた。

リーダー気質の夫にとって、補佐的な仕事はやりがいを感じない。

自分を前に出したい人であり、もしかすると補佐してもらわないとダメなタイプかもしれないとも思う。

だが、なぜか人を惹きつける勢いというか、自信というか、どこかノーマルなタイプではないところがある。

決断力と弱腰ではないところが仕事としては数字に表れるタイプであった。

売り上げという数字をたたき出す勝負勘というか、人がしり込みする時に感じる恐怖心が鈍いというか、思いっきりの良さをもっていたからである。

会社が求める以上の数字をたたき出すようなところがあった。

昭和のブラック起業並に働くことを楽しめるタイプには相性がいい人であろう。

ふく子は会社側は数字を出す夫を簡単には手放さないだろうと考えていた。

夫の辞表と会社の対応

ふく子は「辞表を出して会社の出方、様子を見ろ」とアドバイスしていたが、夫は聞かなかった。

「もう会社からは俺は必要とされていない」と自己肯定感が低いプライド高男は考えていたからである。

夫の辞表は直属の上司の手元で、幸か不幸か、1か月間保管されてしまっていた。

その間に夫の起業準備は進んでしまうわけなのだが、さらにその上の管理職に辞表が渡った時に、会社は 「夫のポジションを上げる・元に戻す」という条件 を提示してきた。

ふく子のスマホが鳴った。

「どうしよう、ふく子!」と夫が焦る

「どうしよう、ふく子!元に戻れるって!どうすればいい?」

ふく子の憤りは最高潮だった。

すでにフランチャイズの契約をしており、120万円の支払い義務 も発生している。

「どうすればいいだとぁあああああああああ!!!!

心の叫びが止まらない。

が冷静であるように努めた。

電話では話せない。家に帰宅してからと夫に伝えて電話を切った。

姉の夫から神の一言

怒り狂うふく子は、夫のこれまでの事の経緯を話していた姉に電話をした。

ふく子からすると「だから言ったじゃないか!自分を信じて、辞表提出後の会社の反応を待てと!」という憤りしかなかったからだ。

そんな話を姉のそばで聞いていたであろう姉の夫がふく子にアドバイスをくれた。

「彼は120万円で自分の欲しい会社でのポジションを買ったと思えばいいんじゃない?」 と。

もう過去のことだ。

この言葉で、ふく子はようやく冷静さを取り戻した。

いらぬ出費はしたが、幸いというべきか、会社には戻る。

起業したところで、それはまた大変な日々が待っていたかもしれない。

このことで、夫は会社に残ってまた、自分なりに働いていくだろうと。

この失態をしたことで、これから変な気を起こさずに、会社で働くであろうと考えた。

考えるようにした。

夫を会社に戻し、損失を最小限に


金融公庫の借入金は即返済した。

フランチャイズ会社への120万円は取り戻せないか弁護士に相談をしてみた。

契約書というのは効力が強いと言われた。

だが、真面目に展開している会社であったこと、研修に参加していないことや、そのフランチャイズの会社に裁判を仕掛けた場合、記録に残したくない、不評を避けたい、というリスク回避のために、相手側は返金に応じてくれるかもしれないという弁護士の助言のもと動いた。

半額の60万円の返金で交渉したのが通り、損失は60万円に抑えることができた。

この一件で、夫は懲りたかに見えたが「一度あることは二度ある」 の法則が発動することになる。それはまた後で記す。

そして、その時点でふく子はその「2度目」の予感は持っていた。

これにより、ふく子自身も 起業に興味を持ち始める のだった。

そして芽生えた「自分も手に職を」

金融公庫の借入金はすぐに返済。

フランチャイズ会社にも返金交渉を行い、弁護士の助言を得ながら動いた結果、60万円が返ってきた。

これで損失は最小限にとどまったが、ふく子の心には別の芽が芽生えていた。

「夫のことで振り回されるだけではなく、自分も何か稼ぐ力を持たなければ」

ふく子は姉に「一緒に何かやらないか」と相談を持ちかけた。

すると姉が「知り合いに、色を仕事にしている人がいるよ」と言った。

この言葉に、ふく子の心は動いた。

色に溢れる世界…その響きに惹かれて、ふく子は色の勉強を始める決意をした。

この体験から学んだこと

  1. 勢いだけの起業は、家族を巻き込むリスクをともなう
  2. 契約やお金に関することは、信頼関係だけでなく確認・共有が不可欠
  3. 他人の失敗も、自分の生き方を考える大きなきっかけになる

次回は、色の世界との出会い、そして資格取得へと進む道のりを綴ります。

次回:色の勉強をする|プロローグ②

コメント

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  2. ふく子 より:

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